ベントウッドチェア トーネットの革命

ベントウッドチェアというものをご存知でしょうか。
ミヒャエル・トーネットが1840年代に2つの特許を取得して大量生産を始めた、革新的な製造過程をもった椅子です。

軽くて丈夫、そして誰もがどこかで見たことのある、どこかノスタルジックな椅子。
その椅子の全てはトーネットの開発した曲木技術から始まりました。
本日はベントウッドチェアについてご紹介したいと思います。

ベントウッドチェア トーネットの革命

ベントウッドチェアとは:ベントウッドチェアの特徴

ベントウッドとは『曲げ木』を指す言葉です。
ベントウッドチェアはその名のとおり、背もたれから脚まで、木材を蒸気で曲げて作られています。

1842年、トーネット社はトーネットが開発した曲木の製造技術で特許を取りました。当時、家具製造に関して特許を取得することは革新的な出来事だったそうです。

ベントウッドチェアの特徴としては、

  1. 特許を取得した曲木技術を応用して製品化された椅子であること
  2. 6本の曲げ木と10個のネジという最小限の部品でできているため、技術を持った職人でなくとも組み立てることが容易だったこと
  3. 部品ごとの生産で大量生産・大量輸送に特化

などがあげられます。

木を曲げて作ることで丈夫・頑丈なうえに、パーツも少なく、椅子自体が軽いのです。
また、大量生産と大量輸送を見据えて開発された椅子だったため、従来のウィンザーチェアに比べコストパフォーマンスも良く、当時ヨーロッパに増え始めたカフェにもトーネットの椅子がたくさん置かれました。

現在、アンティークやヴィンテージでたくさんのベントウッドチェアを見かけるのは、丈夫で壊れにくく、さらに大量生産されて流通し庶民に親しまれた椅子だったからといえるでしょう。

ちなみにヨーロッパでは今でもカフェなどでベントウッドチェアが使われているのを見かけることも多いです。日本画の巨匠、 東山魁夷も、かつてフランス・セーヌ川のほとりでベントウッドチェアを描いているように、トーネットの椅子はヨーロッパの町の風景・心の風景になるほど長く人々に親しまれているのです。

トーネットの椅子について、次は少し歴史の観点からもご紹介していきます。

大量生産時代の申し子 トーネットのベントウッドチェア

1796年 ミヒャエル・トーネット(~1871)は現在のドイツに生まれます。

彼は家具職人の下で、ドイツ式(ビーダーマイヤー様式)の家具作りの修行をした後に独立し、曲げ木について研究を重ね、新しい製造工程による椅子(ベントウッドチェア)を開発します。

1842年 曲木の製造技術で特許を取得
1849年 座面の枠に脚を取り付けるためにボルトやナットを使用する特許を取得

木製家具の製法特許の取得は史上初のことだったとか。
これ以降、椅子の大量生産が始まります。

トーネットの椅子

椅子の部材はパーツごとに各工房・工場で大量に作られます。
それらは部品の状態のまま鉄道で運搬するため一度に大量の輸送が可能でした。そして集まった部品を拠点地で仮組して現地へ運び、そこで椅子としてしっかり組み立てて販売するのです。

椅子は6本の曲げ木と10個のネジという必要最小限の部品でできているため、従来の椅子に比べ格段に簡単な構造で組み立てが容易でした。組み立てだけでなくパーツの製造に関しても容易に製造できるように、トーネットは工夫を重ねたようです。
そのため従来の家具職人のように長年かけて技術を習得する必要もなく、たくさんの労働者を雇い、時間をかけずに各地での生産に充てることができたのです。

大量生産を可能にした時代

椅子の部品を各地で作り、部品のまま輸送、現地で組み立てるという優れた工程を生み出したトーネットですが、この工程は当時画期的なものでした。
こういった工程を可能にした背景としては、蒸気機関車による大量輸送が容易な時代であったことが大きかったことでしょう。

また、トーネットは大量生産を見据え、材料確保に動いています。
具体的には、椅子の材料となる木材が採れる山や森のオーナー(資産家)から木材の提供を受ける契約を取り付け、山林近くには部材を作る工場作っていったそうです。

ここからは材料の産地で部品を加工するという効率的なスタイルで椅子の生産に臨んだことがわかります。
新しい時代・流通を制したトーネットの椅子は、大量生産と大量輸送に特化した時代の申し子だったといえるでしょう。

ベントウッドチェアは現在でも作り続けられています。

新しいデザインを取り入れながらも、従来の形をもとに製作されている現代のベントウッドチェア。

実はトーネットの椅子は完璧かつ完成されたデザインで、
基本的に脚や座面は同じまま、背もたれ部分の形などを変えた様々なバリエーションを生み出すことができました。

トーネットが作った椅子は、最初からリデザインが可能な椅子だったのですね。

アンティーク・ヴィンテージのベントウッドチェア

現在も新しく作られているベントウッドチェアですが、アンティークやヴィンテージの椅子の座面には華やかな模様が描かれていたり、彫刻されていたりします。
毎日椅子に腰かける都度、座面に目がいきますから、何気ない日常の中で美しい絵柄を楽しむ贅沢感を味わえますね。

種類によって柄が異なったり絵柄がないものもあるので、そういった部分に注目しながらベントウッドチェアを探してみるのも楽しいと思います。

また少しレアものになるかとおもいますが、アンティークには子ども用やぬいぐるみ用の小さなベントウッドチェアも存在します。
小さい頃からベントウッドチェアに親しんでいれば、大人になった時にはベントウッドチェアにノスタルジーを感じながら椅子を買い求め、世代を超えて使っていくのでしょう。

こども用やぬいぐるみ用の椅子を作り、未来の椅子のオーナーを育てるという(笑)非常に広い視野を持って販売されていたことがわかります。

なお、アンティークやヴィンテージのベントウッドチェアを購入する際は、きちんとメンテナンスをしてある椅子を購入するようにしましょう。

ベントウッドチェアは曲木で作られています。
特に背もたれから脚にかけては1本の曲木で作られていますから、長い年月をかけて少しずつ木がゆがんだりねじれたりして、どうしてもガタつきが見られることが多いのです。

とはいえ、軽くて丈夫、そしてノスタルジック・レトロなデザインで、今どきのインテリアにもピッタリです。
ガーデニングルームに置いてみたり、キッチンに、ダイニングにと気兼ねなく使えます。
ぜひ、気取らない毎日の椅子として楽しんでみてください。

以上、四門がトーネットの椅子、ベントウッドチェアをご紹介しました。