食品衛生法とアンティークのキッチン道具 綴る仕事の裏話

四門です。現在はアンティークショップの専属ライターをしています。
アンティークの仕事をしていると、店側の様々な裏事情もあって「この仕事内容はどうかな(困)」というワケありな仕事もときどき出てきます。
僕もそこは仕事ですから言葉を飾ってやり過ごすことになるのですが、今日はそういった裏事情を少しだけ話してみたいと思います。

アンティークのキッチン調理道具の紹介文は食品を連想させてはいけないという仕事

以前、状態の良いシルバー製のキッチンアイテムについての仕事を依頼されたことがあります。
当時僕はそれなりに長く商品ライターをしていたんですけど、アンティークの仕事については日が浅く経験がない。アンティークについてはまだまだ知識も足りず、特に古物販売については全く知らない状態だったんですよね。

いただいた資料を確認したところ、シルバー製とされるスクイーザーでした。要するにレモン絞り器ね。
アンティークものではありましたが比較的年代も浅く、商品は良いコンディションで、錆・カケやキズもほとんどない状態でした。
そうですね、例えていえば、昔おばあちゃんが使ってたものがなんとなく台所に残されたまま、孫が大人になって見つけた、という面持ちです。

まあ、まだまだ実用として檸檬を絞れそうだったので「柑橘系のフルーツを絞ってフレッシュジュースを作ったら、アンティークとジュースと両方楽しめていいだろうなぁ~」っていう内容の記事の原稿を書いて提出したら怒られました。

「インテリアとしてお使いいただくように書き直してください」という文面とともに『食品・調理』を連想させるワードを使ってはいけない旨の連絡を受けたワケです。
すぐにショップのオーナーに指示されるがまま「水を入れて花を飾ったり、キッチンインテリアとして窓辺に飾れば綺麗だろうなぁ~」と書き直したんですけど、僕にはちょっと文章が理解できない。

( ゚Д゚)あのさ、レモン絞り器に花を飾るヤツなんているの?(怒)

「状態が良く、水漏れもありません。花を飾ったりしてもお使いいただけます」って書いてあれば、キッチンで調理器具として実用できると思い込んでしまうお客さんもいるはずですけどね。でもそこは「実用できません」とは敢えて書かない。
※「実用できません」と書けばお客さんは買いません。店側は、人によって解釈が異なるグレーゾーンを利用した文章で販売しているのです。

で、実際に「実用できる」と思い込んで購入し何かあった場合にはお客さんの責任となるワケです。お客さんが「勝手に実用できると勘違いした」ということです。だって店では「実用できます」なんて書いていないから。

いえいえ、出所が不明・素材が不確かな商品に「実用できます」なんて書いてはいけないのです。

食品衛生法

例えばアンティークの金属製ポットについての紹介文では「水漏れもありませんのでお使いいただく分には問題ないと思います」という文章をよく見かけることがあります。
こういった文章の場合、水漏れしない、利用可能となっているけれど「あなたも紅茶を淹れてお楽しみください」「ご家族とのティータイムにコーヒーを淹れてお使いください」という具体的な内容になっていない場合が多い。
「お使いいただく分には問題ない」と書いているのは、水を入れて花を飾れますよ、とか。そんな意味合いで使われているのですね。

個人のネットショップに限らず大手のアンティークショップでも、こんな「どうとでもとれるような」言い回しを見かけます。そうはいっても食品に実用しても大丈夫であると思わせる直接的な文章ではないはずです。勘違いさせるに十分な書き方をしていますがね。

※素材・品質が保証されている場合や食品を入れても大丈夫である確認がとれている商品、実際に食器・調理器具として販売している場合はこの限りではありません。

アンティークショップでキッチン雑貨について、主に金属などで素材が確実でないものに「実用できる」と明言しないのには理由があります。それは食品衛生法です。
食品を入れて使える、食品に触れて問題ないと「勘違い」を誘導する文章を書くと、食品衛生法に抵触する恐れがあります。
出自や素材の明確ではないアンティークの調理用品を紹介する際に食品の調理を直接連想させる文章を書いてはいけないのはそのためです。

1.食品衛生法

わが国における食器の安全性は、食品衛生法により規格基準が設けられ、その安全性が確保(保証)されています。食品衛生法第15条には、「営業上使用する器具及び容器包装は、清潔で衛生的でなければならない。」と定められています。また、第16条では、「有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着して人の健康を損なうおそれがある器具若しくは容器包装又は食品若しくは添加物に接触してこれらに有害な影響を与えることにより人の健康を損なうおそれがある器具若しくは容器包装は、これを販売し、販売に供するために製造し、若しくは輸入し、又は営業上使用してはならない。」と記述されています。したがって、有害な物質が溶出して人の健康を損なうおそれのあるような食器具は、製造、販売、使用ができないことになっています。

引用元は以下のサイトです

製品評価技術基盤機構のホームページです。化学物質管理分野の(4)食器に関連する法規制等の情報を掲載しています。

この他にも新品中古に関わらず、銅製品や真鍮・シルバー製品はインテリア用としてのアンティーク独特の良い風合いや艶をだすため、特殊溶液を用いて腐食加工・洗浄等を施されている可能性もあり、こういった場合も洗浄剤の内容が食品衛生法に引っかかってきます。

特にわかり易いのはアンティークの銅製のケトルですね。
銅は錆びやすく緑青がふいてしまいますが、基本的に現在の見解では緑青は毒ではありません。ではなぜ使ってはいけないのかというと、銅製品(ケトルや食器等)は直接食品にあたる部分に銅を用いてはならないと決まっています。そのため現在食品に触れる銅製品は食品に触れる面に錫メッキ(またはニッケル等)を施されています。アンティークはそういった安全基準がない時代の物ですから銅がむき出しのままであるわけです。なので「実用してはいけない」と。こういうわけなんですね。

中味が真っ黒く錆びた補修のされていない銅製アンティークケトルを「これで沸かしてお茶を飲んでくださいね」と販売している古物業者さんはほぼいないと思います。
実用として使えるように書いている商品は、専門のメッキ業者の手によってメッキをかけ直されているものです。

そういったことを心に留めながらアンティーク屋のネットショップを覗いてみてください。
実用できると勘違いさせてしまうかのような文章もありますけど、言葉を飾り、うまく逃げられる文章もあります。ウソは書いていないけど本当のことも書いていないグレーゾーンの文章というわけです。

こういった事情もありますから、アンティークショップで販売されているキッチン雑貨などは、特に記載がない限りキッチンに飾るためのアンティークインテリアとして割り切って購入を検討されたほうがいいと思います。

以上、四門でした。